津波から戻ったカメラ ようやく言えた はい 笑って

津波から戻ったカメラ ようやく言えた「はい、笑って」

2021/02/20 20:00
 2011年3月11日、海から約100メートル離れた場所にあった店で大きな揺れを感じた。保育園に子どもを迎えに行き、高台の小学校へ避難している時、カメラを忘れたことに気がついた。
 05年に開業する際に初めて買った中古のカメラと、いつも仕事で使うカメラの計3台。店へ取りに戻ろうとすると、「キャー!」と悲鳴が聞こえた。振り返ると、津波が街をのみ込もうとしていた。
 がれきの中をカメラを探して歩き回ったが、見つからなかった。「もうやめようかな」。先が見えず落ち込んでいた時、隣の宮古市の小学校から電話がかかってきた。卒業アルバムの撮影を担当した学校で、今度は入学式の撮影依頼だった。
 店もカメラもない。ためらったが、電話口では「何とかしてみます」と答えていた。以前働いていた会社にカメラを譲ってもらい、4月下旬に入学式を迎えた。
 体育館は避難所になっていた。教室に並んだ新入生を前に、ファインダーをのぞく。いつもなら「はい、笑って」と声をかけるが、言えなかった。教諭たちの表情が硬く見えた一方、子どもたちの無邪気な笑顔が救いだった。
 応募していた仮設商店街での営…